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2014年5月30日金曜日

【Radio】成長と維持、持続性のカギとは? 実践編その1

どんなラジオ局にしたいか、ということを考える検討編に続き、今回から数回に渡って「実践編」をお送りして行きたいと思います。例えば、機材にはどんなものが必要なの?著作権ってどうするの?など、「実際どうなのよー??」という疑問について、よく聞かれるトピックを紹介していきたいと思います。

その前に、このまとめの意図についてお話しておきます。
これらは「成長するコミュニティFM」というテーマに基づいております。実際に運営に関わって感じたのが、如何に全体を見れるか、ということと、それを踏まえてディティールに拘れるか、という点でした。これはラジオ局に関係なく、あらゆる業種においても有効です。全体を見て、部分に拘る、という姿勢は、私が行っているコンサルタント業務でもお話をしていることです。
コミュニティFMの成長とは、ヒト、モノ、カネを持続的に増やしていることです。普通の企業の成長と変わりません。コミュニティFMでもそれが実践できるのですが、固定観念を無くして読んで頂けると、すーっと入ってくるように書いております。

さて、実践編その1ですが、根源的な問いです。会社としての成長と維持です。会社である以上、売上は右肩上がりでありたい、または、ずっと成長しないとしても、ある程度の水準で維持をしたい、と考えるのは自然なことです。しかし、本質的には広告業であるコミュニティFMにおいては、地域の経済状況と直結しますので、地域が丸ごと儲かる状況にもならない限りは、広告市場も大きくならないので、売上はどこかの段階で横ばいになってしまいます。

その前提を踏まえた上で、ラジオ局を作りたい、という時に、大きくわけて2つのことに取り組んで行く必要があります。ここではあえて分けて取り組むことをオススメしますが、その2つとは、周波数獲得とアンテナ設置、それと、運営体制の整備です。簡単に言えば、ハードの整備とソフトの整備と言えるでしょうか。

数年前に電波法が改正されました。
それによって出来るようになったのが、ハードとソフトを分離する、というやり方です。極端な話、アンテナを持つ会社と番組を作る会社が別でもいいよ、ということです。以前は、原則的に一体でないとダメでした。

なので、複数の地域にまたがって、アンテナと電波を持つハード専門の会社が生まれるかもしれません。基本的には、電波法の摘要は、電波の割当をもらったアンテナを整備する会社が対象になります。故に、アンテナや電波は持たずに、複数の放送局に放送料を支払いながら番組を放送する、という事業も可能になるわけです。その場合、それはイベント会社かもしれませんし、出版社かもしれません。そんなことも可能になったのです。

分離できることのメリットを考えるとコミュニティFMの運営方法が大きく変わっていくかもしれない、ということがよくわかります。

ハードとソフトが一体的に運営される場合を考えます。

地域のメディアがない状態でコミュニティFMが誕生したとします。そうすると、当初は様々な方が関わりだします。その期待値は、初年度の売上という数字でそのまま反映されるでしょう。しかし、数年すると売上が横ばいになります。その数字がその地域の「広告市場の限界」と言えます。

この限界とは、それ以上稼げない、ということではありません。正確に言うと「今の体制ではそれ以上稼げない」ということになります。つまり、写真1人で1000万円売り上げるとすると、社員3人なら3000万円、5人なら5000万円、ということになります。よって、会社として、それ以上の売上を求める場合には、①スタッフを入れて体制を強化する、②聴取率を上げて出稿率を上げる、③いっそのこと別の事業を行う、などの選択をする必要があります。

一方「それ以上稼がない」という選択肢もあります。少し矛盾しているかもしれませんが、維持こそ継続と考える方法です。これは運営に関わる支出を、固定経費、変動経費としてわけて考え、主にハードウェアの維持=固定経費を基準に、それを維持させるための運営を行う、ということになります。つまり、この場合、働くスタッフも入れ替わって行く方がいいかもしれません。若いスタッフを育てて、という考え方だと、売上が横ばいである以上、お給料をアップすることも難しいので、横ばいの給料でいいよ、という方を集めるか、それができないといずれ入れ替えることになります。なので、社員教育をしながらというのは難しいかもしれません。

基本的に、入ってくる以上に使わなければキャッシュフローに問題は起きません。会社の運営としてこれ以上シンプルな考え方はありません。ですが、実際に運営してみると、どうにもお金がかかってしまうのです。

これまでにも、いくつかのコミュニティFMの方々とお話をしてきましたが、最近、資本金1500万円、1000万円で整備を整えて開局したという放送局の方にお会いしました。イニシャルコストを抑えてスタートさせるのは、本当に大変なことですが、実に多くのノウハウが詰まっていることがわかりました。私自身が考える「成長するコミュニティFM」には欠かせません。イニシャルコストの大小は、ランニングコストにも直結してきます。

次回以降は、主に、運営の部分についてお話をしていきます。若干機材のことも入ってきますが、私自身は専門としていないので、機材に関しては個別にご相談頂ければと思います。

2014年5月14日水曜日

【Radio】ボランティアと管理の両立は難しい

今年度から熊本の崇城大学情報学部の非常勤講師を務めさせて頂くことになりました。
コミュニティFMで行っている番組作りについていろいろとお話をしています。

さて、今回のラジオネタ、「ボランティア」と「管理」について考えてみたいと思います。誤解を恐れずに言えば、重箱の角をつつくようなことを書きます。ですが、文脈の中で読み解かないとわからない内容です。全体を俯瞰する鳥の目と細部を見通す虫の目は、両方備わってこそ意味があります。

よく相談で言われるのが「ボランティアを受け入れたい」「受け入れるためにはどうしたらいいか」という質問です。そこで、実際どんな感じなのかを再現してみます。

相談「ボランティアを受け入れたいんです」
私「なぜですか?」
相談「番組作りのコストが減るから」
私「その他に理由は?」
相談「......コストが一番ですね」

ポイント①
「その他に理由がない」場合、短絡的なモノの見方です。もう少し広い視野を身につけましょう。

私「その他はないですか?」
相談「番組が増える?」
私「増えますね。他にどんなメリットがあると思いますか?」
相談「さらに人が来るかもしれません」
私「そうですね、その他にメリットはありませんか?」
相談「んーんー」
私「では、ボランティアを入れるデメリットはなんですか?」
相談「人集めをどうやっていくか」
私「そうですね、他には?」
相談「人が集まるので管理の問題とか」

まず、ボランティアを受け入れることで関わる人が増える、つまり、コンテンツが増えます。つまりは、ボランティアを受け入れることで、コンテンツは増える、となります。ですが、それを手にすると失うものがあるのですが、それが「管理」です。

故に、「たくさんの人を関わらせたい」と、「管理したい」は、共存できないのです。ただし、これは一般的に考える「管理」を行った場合なのです。

私「たくさんの人に関わってもらいたいけど、管理したい、という場合、どんな管理を考えていますか?」
相談「.........」
私「では、管理をしない、とした場合、どうなりますか?」
相談「.........」

ここまで来てわかると思いますが、相談者にとっては未体験なので、イメージ出来ないのです。イメージ出来ないことを質問されて、答えたところで、実際には伝わらないのではないかと私は感じました。そこで考え方を変えてみましょう。

「ボランティアとして関わる人を増やしたい」とは言っても、ローマは一日にしてならず、千里の道も一歩から、ということで、アタマの中に、ボランティアAさんをイメージし、その方が、継続的に番組作りに関わることができ、さらには、そういう方がたくさん増えれば....「ボランティアとして関わる人を増やす」ことはできそうではありませんか?

さらに言えば、自分がボランティアAさんになったつもりで考えてみましょう。

ラジオ局のディレクターとこれから番組を作って行くとき、ボランティアとして楽しく、継続的に番組作りに参加していきたい、と思うにはどうしてもらいたいでしょうか?そのインセンティブは何ですか?お金以外の何かがそこに必要なことがわかります。魅力ある放送局にするには、それに対しての想像力がカギになります。イメージをしっかり持つことが大切なのです。

その関係をどう作っていくか、という点については、また別の機会にお話します。

*このエントリーは1ヶ月前に下書きしていたのですが、関係の作り方については、5/16の第2回目の講義の内容になりそうです。

2014年2月26日水曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 検討編⑤ 2つのタイプの選び方3/3(今の状況)

前々回から、マスメディア型、ソーシャルメディア型のコミュニティFMのいずれかを選ぶときの3つの視点についてお話してきましたが、今回はその最後であり、最大に大切なこと、「今の状況」です。ちょっと気合いはいり過ぎて長文です(笑。

コミュニティFMには、大きくわけて、管理監督を主眼においたマスメディア型、人的なネットワークを活かしていくソーシャルメディア型の2つのタイプがあります、というお話をしてきました。それを選ぶための視点として、ボランティアの有無には仕事の切り分けを行うことが大切であること、責任ある仕事までもがボランティアで良いのか?という懸念があるよね、というところまでをお話してきました。

というわけで、これまでの理想やイメージの発端となるのが、今回のエントリーになります。
それが「今の状況」から見た視点です。現実的には一番大切なこと、です。これがないと何も始まりませんからね。

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具体的なお話をする前に、たとえ話です。今日はほぼたとえ話です。

頭の中に山を思い描いてください。

その山には、いくつかの登山ルートがあります。そして、それぞれのルートには、個別の特徴があり、平坦だけど距離が長かったり、距離は短くても険しい道だったりがあるとします。
皆さんがリームリーダーです。これから、高校生、大学生、社会人、青年、自営業者、大手企業経営者、お年寄り、身体の不自由な方、というように、性別も属性もバラバラな人たちと登ることになりました。

そこで選んだのは、平坦で勾配が緩やかなルート。

最初のうちは仲良くのぼっています。ですが、しばらくすると、脚が痛いから休みたい。もう少し先までいって休もうよ。時間がかかり過ぎるので4人までならうちのヘリに乗せて山頂までいけるよ。僕はバイクが好きだからバイクでのぼって良いかな?、などなど、それぞれがそれぞれの思いをぶつけてきました。

さて、皆さんがチームリーダーだったらどうしますか?

おそらく選択は3つです。
①それぞれの主張通りに好きにさせる。
②不平不満を聞きながら我慢をさせて一緒に歩く。
③登山自体を放棄する。
あたりでしょうか。
①と②は、のぼりますが、③はのぼること自体を諦めてしまいます。
でも、①と②では、登るのが楽しそうには思えません。そうであれば③を選択する方が良いかもしれませんね。

ここまできて、いやいやまだ選択肢はあるでしょ?とお思いの方もいらっしゃると思います。
そうです、そう思います。私が考える正解は、以下の通りです。

不平不満が出てきたのは「なぜ皆で登らないといけないのか」を参加メンバーで共有していないのが課題だと気づいた。そこで、不満が出た時点ですぐに、脚を止めて、なぜ、皆で登ることを選ばないといけないのか、を立ち止まって共有することになった。

ここでのポイントは「共有する」ことです。
ここで、リーダーが一方的に「私はリーダーです。私の指示に従ってこうしなさい。」
というのは、本質的には、先に上げた②と変わりません。
ここで発揮するリーダーシップは「それぞれの意見を徹底的にすり合わせる役目」です。
皆野話しを聞いて皆の妥協点を探す、というのも、先の②の我慢をさせる、のと本質的には変わりません。


この「共有する」という行為を経ていくとどうなるか、考えてみましょう。

それぞれが意見を出し合っていくうちに、お互いがお互いを理解するようになりました。そして、誰かが「このメンバーで最後まで登りきりたいですね」と口にしました。そして、その想いが波及し、皆に共感を与えます。そして、お互いに声を掛け合い、さらに、歩みが遅い者がいれば荷物を持ってあげたり、背中を押してくれたり、そんなメンバー同士が支え合う姿が見えました。その結果、1人の脱落者もなく、最後まで山を登ることができました。めでたしめでし。

となる可能性が見えました。
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さて、ここまで書けばお分かりの方も多いと思います。
つまり、コミュニティFMもまったく同じ。もっと言えば、企業活動やコミュニティ活動も同じかもしれません。このように、現状と目標をどうすり合わせるか、が大切だということです。

これまで、どういうタイプがあり、どう選ぶか、をお話しましたが、実は、そんなことよりも、どうなりたいか、どうしたいか、の方がやはり重要なのです。これまでお話したことは、「こういう状況になるとこんな感じになるよ」ということでした。それらを踏まえて、どうなりたいのか、どうしたのか、を「共有」し、その目標と今の状況をどうすり合わせるか、がカギなのです。なぜなら「どうなるか?」がわからないのに、「どうなりたいか?どうしたいのか?」なんて選べませんからね。

では、いよいよ「どうしたい」が見えてきたとしましょう。例えば、こんな事実があったとしましょう。

「地元行政が、地域のボランティアを最大限活用して、第3セクターでラジオ局を作りたいと考えている」

行政、第3セクター、という点では管理監督の「マスメディア型」の視点の方が自然だし、ボランティアの活用という点では「ソーシャルメディア型」の視点の方が自然です。スタートから矛盾を抱えています。ですが、その後にこういう文章が続いたらどうでしょうか?

「ただし、5年をメドに民間企業で運営をし、地域企業の情報発信を協力にサポートする存在になってもらいたい」らしい。

こうなってくると、スタートこそ矛盾は含んではいますが、ゴールが明確になので、現状のソリューションを最大限活用して、目標にどう向かえばいいのかを常に議論して共有して、軌道修正を行いながら成長する組織へと変貌していく姿がイメージできると思います。そういう目標に対して、興味がある、関心がある、やってみたい、関わりたいという方が集まってくるわけです。

私は、先に上げた「軌道修正を行いながら成長する組織」こそ、コミュニティFMの最大の特徴があると感じています。

私たちの身の回りは、常に進化、変化しています。
以前の日本、つまり、マスメディアの時代には「価値観の共有」が自然と成されました。しかし、インターネットが登場し、情報が時間と場所を選ばずに簡単に手に入るようになると、価値観は多様化し、メディアは、「多様化した価値を共有する」ためのツールと変化しました。でも価値の多様化はこれまでのメディアの文化にありません。その結果、“マス”メディア離れが生まれました。
一方で、コミュニティFMは、物理的な特定エリアでの放送を行うことを生業として生まれましたが、これは多様化した価値観を「地域」というエリアで分断する行為です。

さて、これまでは多くの人に発信することこそメディアの仕事だったのに、エリアで分断してしまうとなると、ますますメディアの役割がわからなくなってきました。

そこで生まれたのが「共感」という手法です。お笑いで言う所のあるあるネタなどもそうですね。ものすごくニッチなことだったとしても、皆が持っているひっかかりに訴えることで「共感」を生み出せることがわかりました。
そこで、メディアは、共感の発信源となることを目指すようになりました。それは「物理的に分断されたエリア」という課題を逆手に取ることができる方法です。県民ショーなどの地域ネタなどまさにソレですね。前から気になっていた、ずっと思っていた、を地域の話題に結びつけることで、クチコミの発信源となり、多くの共感を引き寄せることができるのです。

例えば、地域9割以上の人が聞くメディアになることができれば...こんなご時世でも広告費が期待できることを簡単に想像できると思います。

コミュニティFMは、「コミュニティと共に歩み、成長していくメディアであれ」というのが私の持論です。
例えば、コミュニティの中に流れる「気になってた」という感覚は、物理的に区切られたエリアでこそ感じ取れるのではないでしょうか。今の「気になっていた」を観察し、軌道修正を行いながら、成長する組織へと変貌していくことが大切です。
また、コミュニティが状況に応じて変貌を遂げるとき、それに合わせ、運営方法ですら素直に見直せるような気軽さも、コミュニティFMならでは、と言えるのではないかと思います。


ギリシャ神話に、プロクルーステースという強盗が出てきます。
「プロクルーステースはエレウシースの外側の丘にアジトを持っていた。そこには、鉄の寝台があり、通りがかった人々に「休ませてやろう」と声をかけ、隠れ家に連れて行き、寝台に寝かせた。もし相手の体が寝台からはみ出したら、その部分を切断し、逆に、寝台の長さに足りなかったら、サイズが合うまで、体を引き伸ばす拷問にかけた。〜後略」(http://ja.wikipedia.org/wiki/プロクルーステース

という、めちゃくちゃな話し(怖。

これだけ変化の早い時代だからこそ、メディアは厳格な基準は持ちつつも、柔軟な姿勢が必要なのだと思っています。「コミュニティと共に、成長する」とは、そういう意味です。すべてを変えろとは言いませんが、しっかりと見極めつつ、必要に応じて変化していく柔軟な姿勢が大切なのです。先に上げた例(三セクでスタートして民間に引き継ぐ)を実行するとなると、段階によって「大切なモノ」が変わる場合もあります。大胆な方針変換のように見えることもあります。ただ、これだけは言えます。どんなところからスタートしても、目指すゴールさえ共有していれば、その道のりは「格段に」楽しくなります!開局を目指している方々、頑張ってください!個性豊かなコミュニティFMが日本全国に溢れることを夢見ております!

ということで、検討編は以上にて終了となります。
次回以降は「実践編」に移ります。例えば、機材にはどんなのが必要なの?著作権ってどうするの?など、「実際どうなの??」という疑問について、よく聞かれるトピックを紹介していきたいと思います。


最後に宣伝です(笑。
これらの整理や共有にお困りの方、是非、一度、ご相談ください。お手伝い致します。
地域に地域特有の様々なメディアが出来たら面白いな、って思ってます。
メディアも自前の時代ですからね。
ミラサポを通して頂ければ費用負担もありませんので是非、お気軽にご相談ください。

【Radio】コミュニティFMの作り方 検討編⑤ 2つのタイプの選び方2/3(仕事の中身)

前回のエントリーでは、マスメディア型、ソーシャルメディア型のいずれかを選ぶ方法を考える前に、考えることの例を挙げ、まずは「ボランティアの有無」という視点で考えてみました。

今回は、そこであがってきた課題「責任ある仕事」を任せられるのか?について考えましょう。

さて、放送に関わる方は、もっとも基本的なことではありますが、パブリックを意識していないといけません。所謂、“公序良俗に反しない”ことが大切です。仮に、政治とは無縁であれば、広告費や制作費を頂くお客さんに対しては、その方の利益を優先しても基本的には問題ないでしょう。ですが、それが公序良俗に反するか、否か、お客様の利益を損なうことはないか、パブリックよりも個人に偏っていないか、などを、常にウォッチしていかなければなりません。ここには明確な「責任」が生まれます。

その他にも、広告を生業にする放送ですから、お客さんのケア、それに伴った制作、番組を毎日放送する、ということも必要です。さらには、どんな基準で何を放送するのか、ネタの選び方、広告か広報かの線を引く事など、いろいろ「管理・監督」しないとならない仕事も見えてきます。

まず1つ目の責任は、内容の「管理・監督」です。

そして、もう1つ責任があるとすれば、それは「育てること」です。
前回、「人が代謝する」という言い方をしました。しかし、実際には、できるようになるまで育てる必要があります。そして、それは「人の代謝」には、必ずついて回る問題なのです。恒常的に人を入れ替える=恒常的に人を育てる、ということです。たまにしか人が入らないのであれば、育てる手間も短期的にかかるだけで、もしかしたらその期間だけの外注さんに育ててもらって様々な技術を習得してもらってもいいかもしれません。
ですが、どんなカタチであれ、「育てる」という行為は必要なのです。

つまり、2つ目の責任は、人を「育てる」です。
他所でその業務についていたとしても、何をすればいいのかを知っているだけに過ぎず、その業務をその地域で実現するには、どうやるのか?という部分が大切なのです。

それを染み込ませていくこともまた「育てる」という行為に他なりません。

そして、これらができることで放送が維持・継続されていくのです。

ここまでをまとめると「責任ある仕事」とは、
①放送内容に関する「管理・監督」の仕事
②人を育てること
この2つに絞られます。

このように整理すると、これらの仕事をしていく人も、果たしてボランティアで大丈夫か?という懸念が出てきます。

つまり、ボランティアの有無と関わってきますが、実は、仕事の切り分けが、大切なのです。責任の希薄な仕事は確実にあります。よく責任を「ゼロ」「イチ」で語る方もおります。少しでもお金をもらうのであれば、そこには責任が発生する、という言い方ですね。
私はそうは思いません。責任の大きさこそお金に比例します。つまり、例えば、ボランティアであれば、責任を持たせること自体がナンセンスなのです。業務をいろいろと切り分けた上で、「ここであればボランティアにお願いできるかな?」などと、考えた方が自然なのです。

結論を言えば、「仕事の切り分け方の自由度の高さ」と「ボランティアの受け入れ」は両立します。よって、逆に「切り分けが困難な仕事」は、「ボランティアの受け入れ」とは両立しません。業務として遂行できるしっかりした体制を取るべきなのです。

さて、次回ですが、3つの視点で考えるということで3つめの視点となります。

それが「今の状況」です。

現実的には、一番大切です。言い換えれば、それ以外は後から考えましょう、としていてもいいくらい大切だと思います。
というのも、ラジオ局を開局しようと準備をすると、それに必要な様々なことが同時に動くので、その歩調を合わせるのはとても難しいのです。どうしても開局には“勢い”が必要で(笑)、その勢いのままに走り出せるよう準備しておく必要があります。もちろん、検討すべきことは検討してからとなりますが、スタート地点の状況をしっかりと見て理解しておく必要があるのです。その重要性を次回お伝えします。

2014年2月25日火曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 検討編⑤ 2つのタイプの選び方1/3(ボランティアの有無)

前回のエントリーでは、マスメディア型、ソーシャルメディア型のいずれかを選ぶ方法を考える前に、考えることの例を挙げました。今回から3回に分けて、3つの視点でどちらかを選ぶ方法について触れたいと思います。

今回の視点は「ボランティアの有無」です。

よくご相談に来られる多くの方から「ボランティアが参加できる運営にしたい」というお話を頂きます。
「運営が大変そうなのでマンパワーに期待できる」「やりたい人、関わりたい人がたくさんいる」など、いろいろな「期待」をもたれていることがわかります。この「ボランティアの活用」という視点にたって突っ込んで考えてみましょう。

【メリット】
 ・人件費削減
  無償でお手伝いしてくれるのであればありがたいですね。
  でもインセンティブの設計は必要です。
 ・コンテンツ量を確保
  関わる人が多くなるとコンテンツの量は増える。
【デメリット】
 ・責任ある仕事が期待しにくい
  厚意のお手伝いが前提なので気持ち的に依頼をしにくい
 ・類は友を呼ぶはほんと。
  ただ、しばらくすると偏ります。

お金、コンテンツの視点での分類です。このあたりまでは想像できると思います。
本当にコワイのはココからです(笑)。

ボランティアは募集するか、ボランティアがボランティア候補を連れてくるかでボランティアの輪が広がっていきます。ただ、たくさんの「ボランティアが参加できる局」というコンセプトにすると、絶えず人が出入りをすることが前提になります。むしろ、人の出入りは呼吸と同じくらい必要なことになります。

つまり、それが実現できる前提で運営方法を考えるなら「人は使い捨てる」というスタンスに立つ方が局の方針としては自然な流れになるのです。若い人を安く使い、安く使ったまま年老いたら、次の若い人を安く雇う。を、繰り返すことが、ラジオ局にとってはストレスの少ない運営方法になるのです。

さて、こうして聞くとなんだかヒドイ話しに聞こえますね。私もそう思います(笑)。
ですが、実際の経営の視点で言えば、人の代謝こそ、継続的な運営に近づけるとは思いませんか?

そこで見えてくるのがデメリットであげた「責任ある仕事」とは何か?です。この問いに答えられないとボランティアで運営する、というわけにはいかないことがわかると思います。


次回は、「仕事の中身」という視点で考えてみたいと思います。

2013年12月22日日曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 検討編④ 2つのタイプをどう選ぶか?その前に。

前回のエントリーから1月程経ちました。シリーズでお送りしております「コミュニティFMの作り方」。これまで、コミュニティFMをマスメディア型、ソーシャルメディア型の2つに分類し、それぞれのメリット/デメリットについて考えてきました。

それぞれのタイプを「会社概要」「売上状況」「番組作り」で説明してきましたが、今回から3回にわけて「どうやって選ぶ?」を考えてみたいと思います。

いくつかの視点があるのですが、一番分かりやすいのが「ボランティアの有無」です。運営にボランティア参加を促すにはメリット/デメリットがあります。そして、もう1つの基準が「資本形態」と「運営主体」です。これによって、スタート時に物理的な制約が生まれるため、ここはほぼ選択肢がない、というのが実際のところです。

この連載を見ている方の視点で言えば、実際には引っ括めて「経営」なのですが、前者のボランティアの有無は「運営の視点」、後者の資本形態や運営主体は「経営の視点」として、敢えてわけて考えた方が良いかもしれません。

さて、今回は、それらを考えるにあたり、その前提で常に見ておきたい「コスト」のお話します。とにもかくにも、すべては「コスト」とのバランスが大切です。

【番組制作のコストについて】
基本的には生放送の方がコストがかかりません。この場合のコストとは、何も出演者のギャラ的な金銭だけでなく、むしろ番組を作る手間を指します。
まず、1つは出演者、担当者の占有時間です。仮にスタッフの基本給を22万円とした場合、1ヶ月22日勤務で1万円/日。つまり、1250円/hとなります(まぁ実際にはそんな簡単なことではありませんが、ここでは話しをシンプルにするためにわかりやすくしております)。
で、1時間番組を収録して放送する場合、収録の後、編集作業があります。収録時間が1.5時間くらいの場合、編集するのに2〜3倍くらいの時間を要します。つまり、1時間の番組を作るのに、3時間かかる。3750円かかる、というわけです。仮に、1日に1時間担当すると75,000円/月が番組制作にかかるコストです。その間、スタジオも使えない、パソコンも使えない、もちろん、人は張り付いたまま、となります。
逆に生放送であれば、事前の準備に同様の時間をかけても、そこで終了。スタジオに入るまでは同じですが、その後は収録の場合の1/3となります(この視点で収録コストを下げる方法もありますがそれはまた別の機会に)。
さて、一方、編集とはどんなことをするのか?ということですが、単純に言えば「無駄を省く」ということです。果汁50%の1リットルのオレンジジュースで、100%のものを作ろうと思えば、500mlしかできません。1リットル欲しければ、2リットルの50%ジュースが必要となります。
つまり、内容次第ではありますが、ディレクターとしてOKラインを設定したら、それに見合った収録時間と編集時間が必要である、ということです。このことから、番組制作のコストとコンテンツの面白さはトレードオフの関係にあると言って良いでしょう。NHKの番組がおもしろいのは「コストをかけられる」というのが最大の理由です。

【その他のランニングコストについて】
番組制作のコストをランニングコストと切り離した理由は、基本的には売上に左右しにくいからです。例えば、放送素材の管理には、自動送出システムというのがあるのですが、これは全時間帯の番組を管理するテーブルを作って、それに乗っ取って放送素材が流れる仕組みです。なので、「どの時間に何を流すか」を常に全時間帯管理することになります。これはCMがたくさん入っていようかいまいが、24時間管理することは最初から最後まで変わらないわけです。むしろ、その素材制作の方がコストがかかります。クライアント数も増えれば係る時間も増え続けます。

その上でランニングコストを見ると、管理スタッフの人件費、家賃、光熱費、各種会費、放送素材の仕入、税金、システム管理費などがそれにあたります。ここはとにかく抑える、いかに抑え続けられるかがカギになります。

以上のことから、継続した運営には、
①番組の制作コストと面白さの関係をどの程度の基準で保つか。
②ランニングコストを如何に低い水準で維持できるか。
の2つがポイントとなるわけです。

ということで、次回は、コストとのバランスという視点から「ボランティアの有無」についてお話をしていきたいと思います。

2013年11月20日水曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 検討編③ ソーシャルメディア型コミュニティFM

しばらく空いてしまいましたが、この間にいろいろな発見がありました。
特に、ちょうど1ヶ月前に地元桐生で開催したKiryu Music Fronts 2013は、様々な問題提起のある有意義なイベントとなりました。

さて、シリーズでお送りしております「コミュニティFMの作り方」。これまで、コミュニティFMをマスメディア型、ソーシャルメディア型の2つに分類し、それぞれのメリット/デメリットについて考えてみようと進めてききました。

今回は、今オススメしているソーシャルメディア型コミュニティFMについてのお話です。前回同様にヒト、モノ、カネについてお話していきましょう。開局相談でよく聞かれる「会社概要」「売上状況」「番組作り」です。



まずは、「モノ」会社です。
チェックポイントは、「資本家と経営者」の関係です。さらに2つのタイプに分けます。
【資本家=経営者の場合】
 ・大企業も含めて中小企業にも多いタイプだろう。
 ・基本的にはワンマン経営になりがち。
 ・基本的には同族経営になってる。
 ・よくも悪くも身の丈にあった経営になりそう
 ・ポイントは公共電波であることと個人の擦り合わせをどこに取るか、という点。
 ・個人が公人としての視点をどれだけ持てるのか、という点。
【資本家≠経営者の場合】
 ・会社の運営方法としては一般的だがコミュニティFMのように「強い想い」
  みたいなものが出発点の場合、よほどの限り、これはないかと。。
 ・経営のプロが居ると心強いし、そうでないと大変です。
 ・ちなみに、FM桐生はこのパターンです。
【共通】
 ・小回りは効きやすい。
 ・意思決定までの時間が短く、意思決定のハードルは比較的低い。
 ・コアメンバーの資質が体制の資質と近似してくる。
 ・人が中心となるため、既成事実からの移行にハードルがある。
 ・一方で、横断的な協力体制が作りやすい。
つまり、連携・協力の傾向強い。



次に、「カネ」売上状況です。
チェックポイントは、ここでも「売上の比率」です。
 →放送事業の売上の中身について聞いてみてください。
 ・個人のネットワークは営業でも活かされて、まったく知らないところへの
  営業は割合的に低くなる?
 ・比較的小額、スポンサー数が多くなる傾向がある。
 ・スポンサー数が多いと軒並み右へならえみたいなことも減りリスクが減る。
 ・相手が多いということはケアの方法も考えないとね。
 ・ただし、ある時に営業先、売上が、頭打ちになる。
 ・そうなると新しいところをどうやって開拓するかがカギ。
 ・新しい人を入れて、リーチできる先を増やすのも1つ。
というわけで、人が組織の中心になると、お金のメンでも連携と協力がカギ。



最後に、「ヒト」番組作りです。
チェックのポイントはマスメディア型と同じく「自主制作比率」です。
 →コンテンツの多さは関わるヒトの多さに直結します。
 ・関わる人が多いと管理の仕方も変わる。
 ・コンテンツを人に委ねることで管理コストの軽減ができる。
 ・定期的に意識の確認などを行っていきたい。
 ・関わる人が多いと聞く人も多く、ある段階でリアクションも増える。
 ・番組をやりたい、という声が集まりやすくなり、
 ・結果、さらに番組に関わる人が増える。
 ・新たなコミュニティとの繋がりなどが、そのままコンテンツ数に直結
 ・まさに芋ずる式でコンテンツ量は増えていく。
 ・増えることでクオリティのばらつきが生まれる。
 ・定期的に交流会などを企画してみたりして、ボランティアも含めた
  スタッフ同士が切瑳琢磨しやすい環境を作れる。
というわけで、連携、協力がカギ。CD寄贈したいんですけど、なんて方もたくさん現れてきます。


このように、ソーシャルメディア型だと、想いを持った人から派生して、連携・協力の輪が広がるイメージなんです。ジワジワと確実に認知度、参加者が増えていくことになります。関わる人が多いということは、接点が増えるためトラブルがちになります。ただし、これは、トラブルにならないようにすれば良いのであって、関わる人を減らせば良い、ということではありません。

結局は、どんな放送局であるべきか、どんな放送局にしたいのか?が大切なのです。もっと言えば、なぜ、ラジオをやりたいのか?というところから積み上げて行くことで、自ず自分の身の回りのことが見え、自然と道が開けて行くものです。

関わる人が多くても、同じ失敗を体験したり、体験を共有することで、自社の文化が生まれてきます。その言語化が実に難しいところでもあります。

さて、次回は、マスメディア型とソーシャルメディア型の2つから、自社の文化をどう作るのか、という点についてお話します。



2013年10月25日金曜日

【Radio】みんラジワークショップから生まれた番組「ステファン一家」

FM桐生は、主に夜の時間帯を「市民制作枠」として開放している。
基本、ボランティアで参加するその枠には、およそ70人くらいの方が関わっている。

その時間に、1か月に1度だけ放送する番組が第4金曜日の21時から放送する「ステファン一家」だ。

この番組の母体となったのは、みんラジというワークショップのメンバー。ラジオに興味や関心のある人を、FacebookやTwitter、ホームページで募集して、集まって来たメンバーによって生まれた番組である。

ワークショップを開催して、その中で、皆さんが面白いと思うこと、ものはなんですか?という質問から始まり、皆が面白いと思えるものの方向性を見いだし、さらに、各自が企画を出してメンバーにプレゼンし、全員が手を上げた企画だけ抽出している。
さらに、それらの企画を1つの番組にまとめて「流れ」を作ろうとしていた時に、吉本の新喜劇や関西で放送している「ほんわかテレビ」の話題になり、結果、それらの企画を許容するには、全編ドラマ仕立てにしよう!と盛り上がりを見せて、結果できた番組が「ステファン一家」ということなのだ。

さて、この番組、実は、番組だけを放送することが目的ではない。ゆくゆくは、番組を通して、ファンになってくれた方と共に、八木節でギネスに挑戦することが目的なのだ。
ギネス挑戦にかかる費用、参加者の募集、それらの調達をこの番組をきっかけに実現していく。

当初は、挑戦する内容を発信すれば人は集まってくれるんじゃないかと思っていた。だが、メンバーの1人が、「実際に、逆の立場だとして、『ギネスに挑戦しよう!集まれー!』と言われたって行かないよね?」という素朴だけど明快な問いに対して出した結果が、全編ドラマ、いや、コント仕立てにしよう!だったのだ。


では明日、夜9時にお会いしましょう。
リハで実感しましたが、生でコントをやっていくのは大変でした(笑。
今回は、私はいち出演者として、役柄を頂いて登場しております。どこまで出来るか、自分でも不安ですが(笑)、メンバーと共に楽しみ、聞いている人が吹き出してくれれば幸いです。ラジオはまだまだ楽しくできるんじゃないかと思っています。

2013年10月18日金曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 検討編② マスメディア型コミュニティFM

シリーズでお送りしております「コミュニティFMの作り方」。今回と次回でソーシャルメディア型とマスメディア型、2つのコミュニティFMのヒト、モノ、カネについて、お話します。私が関わるFM桐生は、ソーシャルメディア型寄りなので、マスメディア型はヒアリング等によって得た見地であることをご了承ください。

開局相談でよく聞かれるのが、「会社概要」「売上状況」「番組作り」あたりでしょうか。その他に聴取率なんてのもありますが、運営に関わる内容ではないので省きます。

まずは、「モノ」会社概要です。
チェックポイントは、「行政が資本参加をしているか、いないか?」
 →運営企業に資本参加しているとマスメディア型になる傾向は強いです。
 ・公共施設や公共空間にスタジオや事務所を構えやすくなる。
 ・第3セクター方式だと大手メーカーのコンサルを入れたがる。
 ・その結果、高価な専用放送システムでスタジオが作られる。
 ・機材は壊しちゃいかん!となり、スタジオ卓を触れるのは局内の数人になる。
 ・このヒトがいないと困る、という状況だと人件費も高くなることもアリ。
 ・その結果、役割分担が明確になる。
というわけで、管理統制の傾向に向かっていきます。


次に、「カネ」売上状況です。
チェックポイントは、「売上の比率」です。
 →放送事業の売上の中身について聞いてみてください。
 ・30%超えとか40%超えとかは規模によりますが、
  放送事業に巨大スポンサーがいることが多い。例えば行政だったり。
 ・地域の大手企業が軒並み出稿していたりする。右へ習えで全員参加。
 ・仮に全員撤退に右へ習えとなることを想像すると恐ろしい。
 ・代理店を入れて対応し、リスクとコストを軽減するのもアリ。
 ・各企業へしっかりした対応をするには担当者を明確にしよう。
というわけで、やはり、管理統制の傾向に向かっていきます。


最後に、「ヒト」番組作りです。
チェックのポイントの1つが「自主制作比率」です。
 →コンテンツの多さは関わるヒトの多さに直結しがち。コミュニティ放送では、60%以上ということで、過半数を目標にしましょう、と言われています。
 ・よほど優秀な人材でない限り、番組作りは担当者のカラーの域を出ることはない。
 ・関わる人が少ないのは、視点の少なさに繋がり、出せるカラーが偏りがち。
 ・執行部の守備範囲を出る案件の判断はしにくい。
というわけで、どうしても管理統制の傾向に向かっていきます。


このように「出資に行政が参加している」のは、管理統制の方向性に向く最大の要因です。資本の中身次第ではありますが、行政の資本がベースにあるなら、スタート時は管理統制の方向になりそうですし、実際、その方が無理なく行きそうです。ただ、その労力/コストを考えると....実に悩ましいところです。

では、なぜ前回の記事で、ラジオ局とリスナーの関係を考えることが大切か、と申し上げたかと言いますと、進むべき行き先を、ぼんやりとでも常に見つめていく必要があるからです。コミュニティFMに限らず、会社の運営には、スタートとゴールを、状況を加味した戦略で繋ぐことが大切です。よって、スタート地点をしっかり意識し、そして、向かう先も常に見つめているべきなのです。

さて、次回は、ソーシャルメディア型のコミュニティFMでも同様に見ていきたいと思います。

2013年10月3日木曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 検討編① コミュニティFMの2タイプ

コミュニティFMの取材をしていると開局までの検討内容と議論の経緯が「どんな局になるのか?」と大きく関ることがわかりました。つまり、逆を言えば、目指したいコミュニティFM局をしっかり見据えて共有していくことで「必要なプロセスを経て開局を迎えることができる」とも言えます。

さて、私は経験上、コミュニティFMのタイプを2つに分類しました。
1つはマスメディア型のコミュニティFM、もう1つがソーシャルメディア型のコミュニティFMの2種類です。今回は、2つのタイプがどんな放送局なのかのイメージをお伝えしたいと思います。これは報道局としての姿勢とも繋り、様々な打ち手と深く関ります。

以下の分類は、単純にどちらか、ということだけでなく、その傾向がある、とお考えください。

【マスメディア型コミュニティFM】
・営業、技術、総務役割分担と担当者付けが明確である。
・指揮系統がしっかりしている。
・ラジオ局=発信者、リスナー=受信者という意識が高い。

【ソーシャルメディア型コミュニティFM】
・担当はあるが基本的にオールマイティ
・現場に委ねる意思決定の範囲が広い
・ラジオ局=「コミュニティの一員」という意識がある。


これからコミュニティFMを作ろう!とした場合、上記の中で私自身が最も重要だと考えるのは、3つ目のラジオ局とリスナーの関係です。

「発信者」という意識をもったコミュニティFMは、情報の正確性と信頼性を重んじます。故に意思決定者を明確にし、ブレない方針と思考であらゆる事柄を決定していきます。さらに各担当を決めることで、スムースな意思疎通と現場との連携を実現します。
そのため、現場で新しい発見があり、基本方針を見直す必要性を感じても、まずは、局内の意思決定者を説得する労力と時間を必要とします。特に新しい技術やツールの導入の際には、そのメリット、デメリットを伝えて判断を煽るという手続きが必要になり、その際に優先すべき事柄は意思決定者に一任されることになります。結果、現場とは全く異なる視点で判断されたりすると、現場の士気が下がるなんてこともよくある話です。
さらに言えば、無償のボランティアスタッフに有償のスタッフと同様の責任を持たせることは難しく、結果、ボランティアに委ねる範囲も少なくなります。情報の扱い方で言えば、公的機関から配信されるもの以外の情報、例えば、リスナーから寄せられる情報は裏取りの方法も含めて、スキームを決めていたり、確認が取れるまでは発信しない、という方針を持っているようです。

一方、ソーシャルメディア型の「コミュニティの一員」というものがどういうものかと言うと、例えば、商店街のお肉屋さんに靴屋さんの奥さんが買い物に行くように、店主とお客という関係は、ロケーション次第で、反転します。このように「情報を発信する人と情報を受信する人がコミュニティ内で入れ替わることを許容する」ということを意味します。この役割の転換は、市民が先生になる市民塾や誰でも先生になれる地域大学の取組にも通じるものがあります。
コミュニティFMに置き換えると、コミュニティの一員であるが故、持ちつ持たれつを基本とし、リスナーにラジオを通して情報を発信しても、時には他のメディアを使ってリスナーと情報を共有してインプットすることも想定しています。さらには組織内にもその文化は反映され、担当は決まっていても明確な役割分担はせず、基本的にオールマイティな人材が増えていきます。そのため、あらゆる場面でお互いのフォローがしやすいというメリットがあります。また、ボランティアにたいしてもそのスタンスで対応するので、多くの責任を委ねる傾向があります。
局内では、最終意思決定者はいたとしても、各担当が現場で臨機応変に対応でき、多くの場面で意思決定を行うことを許容し、その経過と結果を報告することで情報を共有していきます。
もちろん、メリットばかりではありません。現場での臨機応変の度合いに個人差が生まれるので、あの人に頼めば大丈夫だとこの人だと断られそう、みたいなことが起きます。そうると、情報が集まる人、情報を活用出来る人が分かれ出して、結果的に統率が取りにくくなる、という危険も孕んでいます。

以上のように、2タイプを検討して決めることは、コミュニティFMの運営イメージと直結していくことがわかると思います。そして、どちらの方が“私達にとって”現実的かを判断することの重要性をおわかり頂けたのではないかと思います。

例えば、どこかの局にヒアリングを行う際も、コミュニティFMとしてのスタンスを伺って、ご自身の中で「マスメディア型」「ソーシャルメディア型」と分類してみてください。その後、局内の組織体制、ソーシャルメディアの利用状況、ボランティアスタッフの受け入れ、そして、経理状況などを伺ってみてください。そうすれば、スタンスと打ち手の矛盾の有無がわかり、なぜその局がうまくいっているか、または、うまくいっていないのかがわかるが見えてくると思います。


最後にその矛盾の具体例を挙げておきます。
これは私が、あるコミュニティFMの方にヒアリングした際に言われたことなのですが、「ボランティアは無責任だから任せられないので、開局から3年くらいで受け入れを辞めた」とのこと。この一文に、実に多くの矛盾が存在します。
すべてを管理統制していくことを前提としたら、ボランティアの受け入れは慎重にすべきです。むしろ、受け入れない方がいいでしょう。一方で、番組作りにボランティアの必要性を感じるのであれば、それを許容できる体制とルールを作るべきです。例えば、その時間帯を市民枠として、局の制作から完全に切り離すなど。ただ、有償で働く責任ある立場の人が、無償のボランティアスタッフに責任を持たせるという発想自体を改めるべきです。有償、無償問わず、責任感は、インセンティブに起因しますので、無償のボランティアでも、お金以外のインセンティブを与えることで責任感を醸成させることは可能です。逆の立場で考えてみてみましょう。仕事として有償でやっている人に無償スタッフのご自身にもっと責任感持ってもらわないと困るとか、放送に関わる人間として、などと言われたらゲンナリしませんか?
さらに言えば、それでもボランティアスタッフのチカラが必要であれば、管理統制を重んじるマスメディア型のスタンスそのものを見直す必要があるのかもしれません。それほど、この何気ない一文は私に衝撃を与えたのでした。

次回は、マスメディア型の運営の場合、ヒト、モノ、カネの3点がどうあるべきかを考えてみたいと思います。

2013年9月30日月曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 事前準備編② どんなラジオ局にしようか?

私が関わるFM桐生の開局以前、いくつかのコミュニティFMへの取材を行ってみて、様々なコミュニティFMの「メディア」としての姿勢の違いに驚いたものです。

簡単に言えば「同じような局はない」ということ。

それはコミュニティに起因しているからか?と考えていた時期もありましたが、どうも違うようです。それはメディアとしての基本コンセプト、基本スタンスの違いで、このいずれかのタイプから「どっちにしようか?」と選ばなくてはなりません。そして、選ぶと自ずと次々打ち手が決まって行くような根源的な分類なのです。

そのタイプですが、最終系は3つに別れます。ただし、スタート時点では2つです。
いずれかを選ぶということを、まず最初に行わないとなりません。

その2つとは、
①マスメディア型のコミュニティFM
②ソーシャルメディア型のコミュニティFM
です。
その先の③としてあるのが、折衷型として、地域メディア型のコミュニティFMです。
経緯はともかく、コミュニティFMは、最終的に折衷型を目指す、ということにはなりそうですが、その道筋は、最初にどこを選ぶかで大きく変わるのです。

コミュニティFMとリスナーの関係を簡単な矢印を使って示したいと思います。これは実際にどうかよりも「基本スタンス」を示していると考えてください。AとB、強いて言えばどっちが大切?みたいなことです。

「仕事と私、どっちが大切なの?」
「そんなの選ぶものじゃないだろ?」

とはいかず、

「マスメディアタイプですか?」
「ソーシャルメディアタイプですか?」

は選ばざるを得ない問いなのです。



そして、①と②の違いですを「何に主眼を置くか?」という点について言うと、
①は管理・統制
②は連携・協力
です。

では、次回では、2つのタイプのコミュニティFMについての概要を説明していきたいと思います。


2013年9月25日水曜日

【Radio】コミュニティFMの作り方 事前準備編① どんなラジオ局にしたいか?

コミュニティFMの作り方について、何回かにまとめていきたいと思います。

先日、とある企業が、コミュニティFMの設立のためのヒアリングに来てくれました。
だいたいどの局がこられても毎回聞かれるのは3つです。
 ①資本
 ②経理
 ③運営
コレです。

実際、この段階で、つまり、他の局にお話を聞きたい。という状況の時には、多くの場合、電波の空き状況の確認は終わっており、”周波数が取れそうだ”というところまでいって、ようやく「他所でお話を聞きたい」となることが多いようです。

ですが、この周波数の空き状況がわかった時には、運営したい、立ち上げたい、関わりたい、という数名の人が議論を重ねている段階に入っていて、その時にはすでに、運営案の話が出ている状況になっています。


さて、それはさておき、「電波の空き状況はある」「一緒にやってくれそうな仲間がいる」という状態でヒアリングに来ると、まずは聞きたいことを聞きます。
「運営は大変ですか?」と。で、「大変です」と答える
「どんなところが?」となると、売上が、スポンサーが、クライアントが、となる。
「どうやってますか?」となってくると、具体的な打ち手の話を説明し、そんな具合にどのように運営しているかをジワジワと聞いてくるわけです。

ひとしきり聞くと「大変だなぁ」となりまして「どうしたものか....」となります。


で、ここまで来て初めてこちらから質問します。

「では、どんなラジオ局であって欲しいですか?」と聞きます。
そして、「それはなぜか?」と繰り返しながら色々とお話を聞きます。
次に、「どんなラジオ局にしたいですか?」と聞きます。
そして、「それはなぜか?」と繰り返しながら色々とお話を聞きます。

これを繰り返していくことで、相手の方が目指しているラジオ局の姿が見えてきます。
それが明確になり、目的や方向性が見えて、ようやく①資本②経理③運営の話ができるようになります。

というわけで、まず最初は「どんなラジオ局にしたいか?」を明確に持つ事が大切です。
それが無ければ、仲間もお金も集められません。

次回は「どんなラジオ局にしようか?」と題したお話をしてみます。


2013年9月10日火曜日

【Radio】コミュニティFMに必要なものとは?

コミュニティFMにとって、何が一番大切なのでしょうか。

仮に、勝ち抜き線をやったとしたら、何が残るのかな、と考えてみました。AとBを比較して、大切だと思うものを残して、という具合にそれを繰り返していって、最終的に勝ち残るのは何か、です。

私が実際に関わって感じたのは「人が大切」でした。
何かを実施するのに必要なのは、結局のところ、ヒト、モノ、カネ、そしてアイデアです。

コミュニティFMにとってのモノとは、機材でしょうか。真新しい放送用機材にワクワクするヒトが集まってくるかもしれませんが、放送が好き=番組が作れるとはなりません。

コミュニティFMにはカネがある、だと、前提そのものがあり得ないことが多いです(笑。ですが、仮にそうなったとしても、一番の目的がカネでは、やはり番組作りやそこで取組べきことは後回しになりそうです。

コミュニティFMにはアイデアがある、となれば、ヒトは集まってくるかもしれない、カネも集まってくるかもしれない、結果、モノも揃うかもしれない。けど、アイデアを担保し、次々出して行くとすると、アイデアが帰属するヒトとなります。

コミュニティFMには魅力的なヒトがいる、となると、まず、ヒトが集まります、ヒトが集まればアイデアも生まれる。アイデアが生まれて実施できるヒトがいれば、カネもモノも集まります。カネとモノが集まれば、さらに優秀なヒトを雇える。

故に、ヒトが大切と考えました。

では、どんなヒトがいいのか?ということですが、それはまた別の機会にしたいと思います。